建築編集家五十嵐さとしと、建築家/版画家の福岡みほが、軽井沢〜八ヶ岳を中心に森暮らしを提案するブランドです。
人の魂を動かすものは、自然の驚異、偉大な先人の言葉、直向きな人の姿、そして美しいデザイン。「時間軸の永い美しいデザインを世に送り出したい」編集家五十嵐の想いが募る日々が続いていました。
2016年秋、シカゴ〜ニューヨークの名建築を訪ねる旅で五十嵐は福岡と出会います。五十嵐は会話を通して住宅作家としての大きな可能性を福岡に感じます。楽観的であり、家庭を持つ母親であること。そして何よりも目に見えないものを大切にして事物を感覚で捉えること。
二人のはじめてましてから2年後の初冬、Arts&Design Office/Now and Thenを設立、新しいモリノイエ®︎のブランドディレクションの始まりです。
株式会社クレア(1994年設立)代表取締役
東京下町の大きな公園隣の小さな家で働き者の両親もとで愛情深く生まれ育つ。二十年来の目標であった八ヶ岳移住をきっかけに森暮らしが日常となる。現在は代官山、軽井沢、八ヶ岳、時々北欧の多拠点暮らし。
五十嵐は、幼い日に目にした「頭の体操」という当時ベストセラーの本のある一問※に心を奪われました。それは、世界を独特の解釈で見るきっかけとなり、時代の流れに身を任せ、徐々に努力することから遠ざかっていきました。やがて、「好きなことを好きな時にして、嫌なことはなるべくしない」という信条が彼の中に芽生えます。しかし、そのような生き方は孤立を招き、時にはいじめの対象にもなりました。それでも、彼はそれを気に留めることなく、少数派であることの心地よさを見出していました。
大人になり、好きなことだけでは生きていけない現実に直面します。運よく都市の再開発を手がける会社に就職するも、古き良き江戸の文化の香る街並みを壊し、無機質なガラス張りのビルを建てる仕事に魂が折れていきます。やがてその道を離れ、家族を支えるために起業しますが、心のどこかで満たされない日々を送っていました。しかし、長年の夢だった八ヶ岳南麓への移住が、彼の日常を一変させます。平凡だった風景が、感動的なものへと変わり、彼は「この素晴らしい森の暮らしを多くの人に伝えたい」という強い衝動に駆られます。
森の中での日々は、彼を自然の循環の一部へと導き、人間としての五感が研ぎ澄まされ、万物への敬意と好奇心が芽生えます。そして、これまでとは異なる社会との関わり方、自然の一部としての生き方を見つめ直すことになります。それは、まるで何かに恩返しをするかのような、新しい自分への目覚めだったのです。
※ 『頭の体操 第1集』(多湖輝 光文社)問11は、探偵が迷路の外側を通って若い女性を救出するという、枠にとらわれない発想を示す問題。これは、私たちが日常で抱える「枠内思考や先入観」に挑戦し、それを打破することの重要性を教えてくれるものでした。五十嵐の人生も、枠を超えた生き方の探求と言えるのかもしれません。
『都会暮らし、森暮らし®︎』という生活様式
古くから豊かな生活様式を持つ北欧の人々が実践する都市と自然に隣接した場所を往復する日常生活があります。芸術や先端技術など人々が育んだ文化に容易に触れることができる都会。自然に近い環境で人間本来の優しさを呼び戻し自分に還ることのできる森。
私(=モリノイエ)は、都会や森など多様な場所で営む自由な生き方を日本の文化として昇華させ、新しい自分と出会える場所をつくり続けます。
株式会社Now and Then(2018年設立)主宰
住宅や別荘建築、暮らし周りの道具などのプロダクト、版画を中心としたアート制作など、枠に捉われない活動をしている。愛媛の今治に居をかまえ、南青山で賃貸暮らし、時々軽井沢。
ここに彼女の人生を変えた一冊の本があります。『大きな暮らしができる小さな家』、それは永田昌民という建築家が書いたもので、彼女が永遠に憧れる人物です。
福岡みほは、京都で学生生活を送りながら哲学に耽り、その後は瀬戸内に戻り高校で教鞭をとります。しかしある日のこと、彼女の大好きな場所の一つである丸亀市の猪熊弦一郎現代美術館で、偶然にもその場所を設計した谷口吉生という世界的な建築家と出会うのです。「こんな素敵な職業があるんだ」と心奪われ建築の世界へと足を踏み入れるのです。建築事務所で働きながら資格を取得し、経験を積み重ねるも、住宅設計の腕を磨くための近道を探していました。そんな時、永田先生の本と出会うのです。彼女は大胆なことを思いつきます。「もし永田先生に自宅の設計を依頼すれば、そのプロセスを通じて学べるのではないか」と。躊躇なく依頼はしたものの永田先生は「自分でやりなさい」と言って、取り掛かってくれません。そんな日々が4年も続きましたが、ついに永田先生が鉛筆を握ります。
敷地調査やヒアリング、プレゼンテーション…日本の建築界では「住宅の名手」と称された玄人好みの永田先生の仕事を間近で見ることは、言葉では言い表せないほどの経験でした。しかし、基本設計が終わる頃、永田先生は病に倒れてこの世を去ります。その後、設計契約は解除され、福岡は自力で設計図を完成させ、愛媛県今治に自邸を建ちあげるのです。永田昌民の遺作ではないものの、その魂を感じる住宅となったのです。この自邸こそが福岡みほの原点であり、住宅作家が人の人生を変えることを、彼女は身をもって知った瞬間でもありました。
彼女の建築信条である「自然に優しい大きく暮らす家」は、尊敬する永田昌民先生へのオマージュであることはいうまでもありません。
『気楽な美しい暮らし』という生活思想
世の中はもっと気楽で良いし、もっと美しくなれる。『美』という基準、『気楽』という心持ち。これらを生活思想として社会へ伝え、優しさに満ち溢れた世界を理想とします。
私(=Now and Then)が手がける建築を中心としたプロダクトやアートには緊張感はありません。気取りのない、道具としての機能がそのまま永く美しい造形になれば良いなと手で練りながら考えています。
Instagram : @fukuokamiho
建築と版画の境界をなぞる福岡みほ(NaT)の店は、彼女の手がける生活の道具やお気に入りのモノたちで満たされています。モリノイエ®︎のクリエイティブディレクターとして、彼女が追求するのは「美」の本質。時を超える美しさと、心地よい緩やかさが共存する品々。存在しないものは自ら生み出す姿勢で、インテリアプロダクトの創造にも取り組んでいます。
アートをもっと身近に感じてほしいという願いから、版画を制作し、ガラス、木工、陶芸、アパレルなど多岐にわたる作家たちとの共同作業を通じて新たな作品を生み出しています。
また、彼女の審美眼で選ばれたアンティークや実用性と美しさを兼ね備えた生活雑貨、そしてモリノイエの住人たちが手放した装飾照明や家具なども取り扱います。店先に並ぶアイテムたちは、美しい森の中での悠々自適な暮らしを思い描かせてくれるでしょう。
代官山 / sarugaku-an
〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町18-8
代官山ヒルサイドテラス F-304
軽井沢 / sumori-an
〒389-0103 長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢1016-551
Tel. 03-6416-3200
代官山アトリエ
〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町18-8
代官山ヒルサイドテラス F-304
軽井沢アトリエ
〒389-0103 長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢1016-551
Tel. 03-6416-3200